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合同会社について

合同会社(LLC)とは?

1.合同会社(LLC)とは
○合同会社は、2006年(平成18年)の会社法の大改正により登場した新しい法人形態の一種です。このれにより従来の有限会社は新たに設立できなくなりました。アメリカ合衆国のLLC(LimitedLLC(Limited Liability Company)をモデルとして導入されたものです。しかし、アメリカのLLCとは異なります(※)ので特に注意してください。
※アメリカでは、「パス・スルー課税」という特殊な課税方式があります。これは、日本の合同会社に相当するLLCが、法人課税の代わりに選択できる課税方法です。株式会社の利益が発生した場合は、法人税と出資者への課税(所得税)の二重課税になりますが、LLCの場合は出資者個人に課税されるだけです。アメリカに本社がある企業が日本に子会社を作る場合にはアメリカの税制に従うため、日本法人を合同会社にするとパス・スルー課税を利用できます。アメリカではこうした節税の一環として合同会社が選択されることもあるようですが、日本で設立した合同会社には、法人課税が課されるため、パス・スルー課税の対象にはなりませんので注意が必要です。因みに日本国内でパス・スルー課税が認められているものとしては有限責任事業組合(日本版LLP)があります。

2.合同会社の特徴の概要
(1)持分会社としての特徴

合同会社の全ての社員は、株式会社の株主(=出資者)と同様に、会社の債務について有限です。このことは、合名会社の社員(=出資者)および合資会社の無限責任社員(=出資者)が会社の債務について無限・無条件に責任を負うのとは対照的です。
出資者と経営が株主と取締役に分離(所有と経営の分離)し、意思決定機関が事項によって異なる株式会社に対して、出資者と経営が一体である持分会社(合資・合名会社)として内部関係・意思決定手続きの機関設計が単純です。
会社の内部関係(社員相互間および会社・社員間の法律関係)の規律については原則として定款自治が認められ、その設計が自由である。株式会社の取締役・執行役のような機関は置かれず、原則として全社員が自ら会社の業務執行にあたる(第590条第1項)。ただし、定款の定めによって業務を執行する社員を、さらにその中で会社を代表する社員を限定しることも可能です。
原則として、定款の作成・変更には全社員の一致を要します(第575条、第637条)。つまり、社員一人一人がこれらの事項について拒否権を有していることになる。因みに、株式会社の場合は、公開会社でも非公開株式会社でも株主総会の特別決議が必要で定款を変更できます。
⑤社員の持ち分の譲渡、新たな社員の加入も他の社員全部の同意を必要とします(第585条、第604条第2項)。因みに株式会社の場合は、非公開会社の場合でもある一定の要件のもとで認められています。
⑥利益分配、議決権分配も、出資割合とは切り離して自由に認められています。株式会社の場合は、株主平等の原則があります。
(2)合同会社としての特徴
○以下の点は、同じ持分会社である合資会社・合名会社とも異なります。
①社員は、全てが有限責任社員であり(第576条)、また社員は間接有限責任のみを負います(第580条第2項)。この点は、株式会社と同じです。
②各社員は出資義務を負い、信用や労務の出資は認められておらず、または設立の登記をする時までに全額払込を要します(第578条)。株式会社も同様です。
※社員になろうとする者は、原則として、定款の作成後(ただし、定款認証は不要です)、合同会社の設立を登記するまでに、その出資に係る金銭の全額を払込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない(第578条)。
③持分の払い戻しは請求できず、また、退社に際しての払い戻しは規制されています(第632条)
④持分の全部または一部を譲り受けることはできず、取得した場合には消滅します(第587条)
⑤任意清算は、認められません(第668条第1項)
3)会社構成員=社員としての特徴
○社員には、次のような特徴があります。
①原則は、会社の内部関係(社員相互間および会社・社員間の法律関係)の規律については原則として定款自治が認められ、その設計が自由です。株式会社の取締役・執行役のような機関は置かれず、原則として全社員が自ら会社の業務執行にあたります(第590条第1項)。ただし、定款の定めによって業務を執行する社員を、さらにその中で会社を代表する社員を限定しることも可能です。
②代表社員=業務を執行する社員は原則として会社を代表します。ただし、定款または定款の定めに基づく社員の互選によって業務を執行する社員の中から会社代表する社員を定めることも可能です。株式会社における代表取締役兼株主に相当します。更に、定款に定めることによって、代表社員から法人代表社員(会長、社長、理事長など)を定めることもできます。※法人が代表社員となることもできます。この場合は、法人は、職務執行者を置かなければなりませんが、これは業務執行社員(③)とは、異なります。
③業務執行社員=持分会社の社員は原則として業務を執行します。ただし、定款の定めによって業務を執行する社員を限定することも可能です。株式会社(取締役会非設置会社)における取締役兼株主に相当します。
④社員(②③以外)=定款の定めにより業務を限定した場合のそれ以外の社員は、定款に記載されますが、登記事項でないために登記簿には載りません。株式会社における株主に相当します。
⑤社員は一人でも大丈夫です。「合同」という言葉に深い意味はありません。
⑥加入と退社
・社員が新しく加入するときには、出資によるものと持分譲渡によるものがありますが、社員が退社するときには、任意退社と法定退社があります。

合同会社のメリット・デメリット?

《メリット》
メリット1.設立コストおよび設立後のランニングコストが低い

①設立時
○株式会社設立時に係るコストは、定款認証時の定款貼付の印紙代4万円+定款認証料5万円+定款の謄本代約2000円と登記申請時の登録免許税15万円(最低)、合計約24万2千円くらいです。これに対して、合同会社の場合は、定款認証は不要ですので、定款貼付の印紙代4万円と登記申請時の登録免許税6万円(最低)、約10万円ほどです。前者の約半分以下で抑えられることになります。
②設立後
○株式会社と異なり、決算公告義務がないので、公告費用が不要です。決算の公告は通常官報で行いますが、少なくとも6万円位の官報掲載料がかかります。
○また、役員の任期まありません(無制限)ので、役員の任期切れに係る役員登記(重任登記等)の費用(1万円)が不要です。

メリット2.経営の自由度が高く、経営の意思決定も早い
①株式会社の場合は、必ず出資比率(株式比率)に応じて利益配分(利益配当)が行われます。しかし、合同会社の場合には、出資比率に関係なく社員間で自由に利益の配分を行うことができます。つまり、会社に貢献した人に利益配分を多くしたいと考える場合、株式会社の場合は出資額に制約されますが、合同会社の場合には自由に利益の配分ができますので、貢献度に合わせた利益配分が可能になります。
②定款により、組織設計も自由に規定できます。企業の出資者と経営が一致しているため、株主総会などを経ずに迅速に意思決定ができます。

メリット3.株式会社と同じく節税や社債発行が可能
○個人事業主から法人化する場合は、株式会社と同様のメリットが受けられます。
①節税
※個人事業主の所得税が累進課税なのに対し、法人税は所得が800万円以下なら22%、800万円以上なら30%と一定税率(資本金が1億円以上の場合は一律30%)。また、設立から2年間の消費税納税免除を受けられます。
②社債が発行できる⇒資金調達の幅が広がる。
③有限責任になる⇒自ら出資した範囲でのみ責任を負えば足りる。

メリット4.個人事業主よりも社会的な信用が得られる
○合同会社を設立にすることにより法人格を取得し法人として認められることになります。個人事業主として活動するのと法人として活動するのではおのずと社会的信用度が異なってきます。株式会社よりは、まだ劣りますが、取引先としての信用度が高まることは間違いないのではないかと思います。

《デメリット》
デメリット1.知名度が低いため信頼性は株式会社ほどではない
○合同会社は株式会社ほど知られてないのが実情です。取引先によっては株式会社でないと契約してもらえなかったり、採用の際に人材が集まりにくいことも否定できません。

デメリット2.資金調達の方法が限られる
○株式会社の場合は、増資による資金調達が可能ですが、合同会社の場合はできません。将来投資家からなどから資金調達をすることを考えているような場合には向かないと言えます。

デメリット3.社員同士が対立する可能性がある
○利益配分が自由である反面、社員間同士のトラブルも起き易くなりますし、こうした対立が会社の意思決定の障害となり会社運営が困難になることも否定できません。このような心配をする方は、向かいないと言えます。合同会社を設立する場合には信頼できるパートナーと設立することが大切です。

合同会社の設立手続き

1.大まかな流れ
○大まかに説明したしますと、

①合同会社として活動する上で決めていかなければならない事項を決定した後に、
②定款を作成し、
③出資金や現物出資(現金で出資するのではなく、物品で出資すること)の払い込みを行ったうえで、
④登記申請をし
⑤登記完了後に税務署などの手続きを行うことになります。次に、それぞれについて説明します。

2.合同会社設立のための基本的事項について
①商号について
○商号は会社の名前となるものです。基本的には自由に決めてよいのですが、いくつかのルールがありますので注意してください。例えば、使用できるのは、漢字やひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビヤ数字や一部の符号などです。また、有名企業の名前や、銀行など、一部の業種を指し示す符号などはつけることはできません。

②事業目的について
○事業目的は、会社の事業内容を示すものです。複数の事業目的を書くのが一般的です。事業目的の変更には手続きと費用(登録免許税3万円)がかかりますので、そのため、将来的な事業も含めてくことが良いと思います。定款に記載されていない事業を行うことはできないことになっていますので、これを防止するために「前各号に付帯関連する一切の事業」的な文言を記載するのが一般的です。事業を行うにあたって公的な許認可が必要な場合がありますが、その場合は、明確に定款目的に明示する必要があります。
○各目的に一貫性がなくても構いませんが、設立から将来にわたって何をやりたい会社かがわからないのも問題に思います。
③本店所在地について
○本店所在地とは、会社の住所のことです。会社の住所として、法務局へ本店登記した場所になります。

※本店の住所と実際の活動の場所が異なるといった場合もありますし、問題の無いところです。
○本店所在地については次のことに注意しましょう。
ア)住所の記載は省略してはいけません。<例えば>「東京都台東区上野5-3-10」の様に省略することは認められていません。「東京都台東区上野5丁目3番10号」と正式に書かなければなりません。
イ)定款上は、最小行政区域までで大丈夫です。<例えば>「東京都台東区」までです。むしろ、そのようにしていた方が良いと思います。事業の発展とともに本店を移転しなければならなくなった時に余分な費用と手間(定款変更や本店の住所変更登記)をかけないで済む場合があるからです。
④資本金について
○資本金とは、社員=出資者が会社に出資する金銭等のことです。貸付金と異なり返済を求めることはできません。資本金は、会社の運転資金などの会社の事業運営に使われるものです。金額的に特に制限はありませんので理論的には、最低1円からでも作ることができます。しかし、実際のビジネスの場では、銀行口座開設の時や取引開始の場合、または創業者資金の融資を受ける場合などの会社信用になりますのである程度の大きさの金額は必要と思われます。実際には300万円以上が多い様に思われます。

○会社の目的とする事業を行うための許認可取得のために自己資本金などの最低の定めがある場合には、それとの関係で資本金を考えなければならない場合がありますので注意しましょう。<例えば>建設業、労働派遣業の場合などです。
⑤社員について
○社員とは、資本金を出す人=出資者のことを言います。株式会社では、株主=社員です。

○合同会社の場合は、社員は、原則、出資するのみではなく会社経営の業務執行のかかわり会社を代表します(所有と経営の一致)ので、だれを社員にするかということを決めることは極めて重要です。ただ、「合同」との名前がついていますが単独、一人社員も認められています。
○複数の社員がいる場合には、原則全員が、社員であり、業務執行、代表社員ということになります。しかし、現実のビジネスの場では、取引に支障が出たり、経営に無関心の社員もいますので、定款で自由に制限を設け、一人代表社員を決めていることが多いです。
○社員の態様をまとめますと次のようになります。
・出資のみする社員=社員
・出資+業務執行する社員=業務執行社員(≒取締役)
・出資+業務執行+会社を代表する社員=代表社員(≒代表取締役)

3.具体的な設立手続き
(1)必要書類を揃える

○上記2.で重要なことが決められたことを前提に以下の必要書類を作成および準備することが必要です。
・定款
・印鑑証明
・社員の印鑑登録証明書
・本店所在地決定書
・代表社員就任承諾書
・収入印紙
・合同会社設立登記申請書
(2)定款について
○まず定款を作らないといけません。定款とは、会社組織を成立するための規約=ルールを定めた書類でもっとも重要な書類です。会社に関する法的トラブルが発生した場合など法律とともに紛争解決の基準になります。この定款を根拠にして合同会社は設立されます。定款は、法的に絶対記載されなければならない事項(絶対的記載事項)等から事細かく決められています。ご自分で学んで作られるのも良いのかもしれませんが、時間的に余裕のない方は、専門家(行政書士など)に依頼するか、設立書類を作成できるサービスなどを利用するのもよいかもしれません。会社に保存するものと、法務局に登記申請書とともに提出するものと2部作ります。※電子定款というのもありますが、詳細は除きます。
(3)印鑑届出書について
○合同会社の実印となる印鑑を届け出るための書類です。そのためには、合同会社の実印となる印鑑をあらかじめ作っておくことが必要です。ビジネスでの実際には、銀行印と角印も必要となりますのでセットで準備することも良いのではないかと思います。

(4)社員の全員の印鑑登録証明書について
○定款作成などの時に社員=出資者全員の印鑑証明書が必要ですので予め市区町村役場で取得しておきましょう。

(5)払込証明書について
○社員全員の払込があったことを証明する書類です。各社員が出資金を代表社員の口座に振り込んだことがわかるように、通帳のコピーを添付します。

(6)本店所在地決定書について
○定款に本店所在地が記載されていない場合(最小の行政区域までの記載)には、本店所在地決定書が必要になります。

(7)代表社員就任承諾書について
本店所在地と同様に定款に代表社員が実名で定められていない場合には用意しましょう。(8)登記すべき事項について
○「OCR用紙」という専用の用紙に記入しますが、CD-Rやフロッピーディスクでも大丈夫です。

(9)収入印紙について
○定款貼付用は4万円です。

※理屈を言えば添付しなくても定款の効力には影響がないのですが、印紙税法違反になりますので会社保存用には添付してください。
○登記申請用は、登録免許税として資本金の1000分の7ですが、最低6万円です。
(10)合同会社設立登記申請書について
○以上の全ての書類をまとめたうえで登記申請書を添付して提出します。法務省のサイトに「合同会社設立登記申請書」と申請書の記載例が用意されていますのでそれを利用されるのをお勧めします。

(11)法務局に提出について
①管轄の法務局でなければなりませんので、本店住所から管轄法務局を確認してください。郵送でも可能です。

②登記申請書、登録免許税=印紙貼付台紙の順番でホチキス左留で閉じます。見開き部分に会社の登録印予定の印で押印します。
③払込証明書と通帳のコピーをホチキス左留にて閉じます。見開き部分に会社実印を押します。
④登記申請書類を一つにまとめて管轄法務局に提出します。
※ホチキスで留めても留めなくても構いません。
○順番は次の様です。
・登記申請書
・本店所在地決定書
・代表社員の就任承諾書
・代表社員の印鑑証明書
・払込証明書
⑤以上で完了です。
○何か不備がる場合などは登記申請書記載の連絡先宛に電話連絡があります。何もなければ完了予定日に完了します。

4.まとめ
○以上が合同会社の設立です。メリット・デメリットを考えながらご自分の目的とする会社経営に向いているか否かを考えてご判断されるのが良いと思います。最初は合同会社からスタートして将来株式会社への組織変更することも可能ですので、もし不明な点や設立に時間をかけられないようであればご遠慮なくご相談いただければと思います。

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